つくる
エンタメ専門社労士事務所
Creative Workforce Support
Chapter 0 — Early signs
休職は結果です。初期のケアで休職しなくても済むかもしれません。
小さなことを見逃さないように。
場面 1 / 共通の事実
単に「元気がない」でなく、実際の業務に支障が出ている。締切が守れない、これまで起きなかった凡ミスや致命的な判断ミスが頻発している、遅刻、早刻、突然の欠勤など勤怠の乱れが増えている。
経営者・人事
周囲や管理職が早期に気づくためのポイントは、単発の変化ではなく「これまでと何か違う状態」がずっと続いているかどうかです。もし、以下のような状態が続くようであれば、注意が必要です。
1. 周囲が気づきやすい初期変化例遅刻・ギリギリ出社が増える:これまで余裕を持って出社していた人が、遅刻や始業直前の駆け込み出社になる。
月曜・休み明けの「体調不良」欠勤:「頭痛」「腹痛」「風邪気味」などの理由で、週初めや休日明けの当日欠勤が増える。
残業の急増:業務量は変わっていないのに、判断力低下で処理速度が落ち、ダラダラ残業や持ち帰り仕事が増える。
簡単なケアレスミスの連発:普段ならあり得ない計算ミス、誤送信、書類の確認漏れが目立つようになる。
返信・対応が遅い:メールやチャットの返信、相談に対するリアクションが不自然に遅くなる。
決断・判断ができない:「どちらにしましょうか?」と聞いても優柔不断になり、決められなくなる。
表情の硬さ・視線の回避:笑顔が消える、目が合わない、返答に元気がなくなる。
逆に「過剰に明るい・饒舌」になる:空元気で焦りや過緊張を隠そうとし、不自然にテンションが高くなる。
会話のキャッチボールが噛み合わない:質問の意図とずれた回答が返ってくる、指示を一度で理解できない。
身だしなみの乱れ:服装のシワ、髪のボサボサ、髭の剃り残しなど、身なりへの無頓着さが目立つ。
嗜好品・休憩の変化:タバコの量やコーヒーの摂取量が急増する、離席(トイレ等)の回数が不自然に増える。
食欲の変化:ランチを食べなくなる、あるいは逆にドカ食いするようになる。
「気になるな」と感じたら、放置せず早めに個別の1on1面談(※プライバシーが守られる場所)を設定します。
切り出し方のフレーズ例(責めずに事実を伝える)
「〇〇さん、少し気になったので声をかけました。業務の評価とかではなく純粋な体調の心配なのですが、ここ2週間ほど『遅刻が増えていること』や『少しお疲れのように見えること』が気になっています。最近、仕事やプライベートで抱え込んでいることはありませんか?夜は眠れていますか?」
ポイント:「最近たるんでいるぞ」という指導ではなく、「心配している」というスタンスで話しかけることで、本人がSOSを出しやすくなります。
「いつもは丁寧な人が雑になった」「いつもは遅刻しない人が急に遅れ始めた」という違和感が続いたら、メンタル不調が隠れているサインかもしれません。声をかけることは、休職を未然に防ぐ(または重症化させない)手だてとなります。
予防のページを読む →働く方
メンタル不調に陥りつつある本人は、本人が不調を自覚しにくいことがあります。脳や心が疲弊して、感情やストレスに気づく機能が低下し、客観的な自分の状態を正しく把握できなくなっていることもあるからです。
内面:「仕事が進まないのは自分の能力がないからだ」「自分が甘えているだけだ」「気合いを入れ直さなければ」と自分を責め続ける。
内面:「頭に霧がかかったようで思考がまとまらない」「メールの文章が頭に入ってこない」「何を優先すべきか判断できない」という強い焦りを感じる。
内面:「体調不良だと認めたらキャリアが終わる」「周りに迷惑をかけたら居場所がなくなる」「休んだらそのまま辞めさせられるのではないか」と怯えている。
内面:「朝起きると吐き気がする」「夜中に何度も目が覚める」「休日も頭痛が取れない」といった明確な体の異変がある。
これら、心身の疲労や不調の可能性を示す変化を感じたら、少し立ち止まり、誰かに相談することも考えてみてください。周囲に助けを求めることは逃げではありません。
予防のページを読む →場面 2 / 共通の事実
一人で抱え込んでいる人には、本人も周囲も「メンタル不調なのでは?」と感じてしまうような変化が現れることがあります。
経営者・人事
メンタル不調と見える様子の裏に、隠れていることが多いのがこの3つです。これらの場合は、会社としての別の対応が必要です。
手がかりは時間帯です。朝と夕方に偏る。特定の曜日に集中する。私用電話が増える。
手がかりは相手です。特定の人や部署と接する日に偏る。異動の直後から始まっている。
特定の取引先や案件の話になると、口が重くなる。
どれも、本人からは言ってこない(言いづらい)場合があります。介護は「家庭のことを持ち込みたくない」、ハラスメントは「言っても変わらない」「自分の力量不足と思われる」など。限界まで抱えてしまうと、ある日「今月末で辞めます」となってしまいます。
聞き方「体調は大丈夫か」と聞くと、介護やハラスメントが理由だとしても「大丈夫です」と返されてしまいます。理由を憶測せずに、事実から確認してください。
例:「今月、朝の遅れが4回あった。体調でも、家庭のことでも、仕事のことでも、こちらでできることがあるかもしれない。」
理由からなら、話しやすくなります。
もし職場が原因だった場合「加害者」と「被害者」を断定せずに、「事実」を確認すること。 決めつけや主観を排し、事実確認に徹し、その場で直ちに処分や該当性の判断を行わない。確認できたことは記録に残します。
働く方
もし、不調の原因が「家族の介護が始まったから」なら、お金をもらいつつ、休むための制度があります。
家族1人につき93日まで。期間を3回に分けて使えます。
家族1人につき年5日まで。時間単位でも取得できます。
93日は「自分で介護をする期間」ではありません。ケアマネを見つけて、サービスを組んで、家族で分担を決める期間です。ここを誤解して「足りないから無理」と判断する方が多いのですが、使い方が違います。
そして大切なのが、言ってもらえないと会社は動けないということ。詳しい事情まで話す必要はありません。「家族の介護が始まりました」だけで足ります。介護離職をしてから制度を知った、という方も多いです。会社は介護を担う人に配慮する義務があります。まず、相談してください。
不調の原因が職場にあるとき、休職の扱いが変わることがあります。ただし、それを決めるのはご自身ではありません。労働基準監督署です。
だから、記録だけ残しておいてください。日付。何があったか。誰がいたか。
「つらかった」ではなく「◯月◯日、△△の場で、こう言われた」。
社内の窓口に言いにくい場合は、労働局の相談窓口も使えます。相談したことを理由に不利に扱うことは、法律で禁じられています。
場面 3 / 共通の事実
「大丈夫」という言葉は、不調をうまく説明できず、そう答えているだけかもしれません。「心配をかけたくない」という強い防衛本能や焦りが隠れていることがあります。
経営者・人事
ここ1週間で『遅刻が2回あったこと』や、『普段ならしない資料の記入漏れがいくつか続いていること』などを伝える
「心配だから、来週の火曜日にまた15分だけ体調の確認させて」など定期観測を約束します。
「大丈夫です」と言われても、その言葉だけで受け止めず、「気になったこと」がまだ続いているようなら、業務上の変化も観察しましょう。周囲に頼れず追い詰められている可能性も視野に入れてください。
働く方
場面 4 / 共通の事実
早めに医療機関を受診することが、早期に回復できることにつながりますので、周囲がメンタル不調ではないかと気づいた際の支援体制を築いておくことが重要です。基本的に、業規則に定めがなければ、会社は受診を命じることはできません。(すすめることは可能です)
経営者・人事
病院(心療内科や精神科)への受診を勧める際の最大のコツは、「心(メンタル)の問題」としてではなく、「体(フィジカル)の症状」を理由に提案することです。
メンタル不調を自覚したくない本人に「精神的にきつそうだから」と言うと抵抗感を示す場合があります。あくまで「体のメンテナンス」として提案します。
「最近、夜は途中で起きずに眠れてる? 睡眠不足が続いているなら、一度お医者さんに相談するのもアリだよ」
「胃腸の調子が悪そうだね。念のため、心療内科や内科で診てもらおうか」
自分のために行くことに抵抗がある人には、「(上司である)私個人のために行ってほしい」と伝えると、「仕方ないな」と受け入れやすくなります。
「〇〇さんがこれ以上無理をして倒れるようなことになったら、あのとき病院に行かせればよかったと、後悔する。私の安心のためにも、一度専門家の意見を聞いてきてくれないかな?」
「空いた時間に探して行ってね」は、不調な時は気力が湧かず結局行きません。
「明日の午前中は業務を調整するから、出社前に病院に行ってきたら?」と、会社側で時間的なハードルを下げます。
どうしても外部の病院を拒否された場合は、個人の感情ではなく社内のルール(安全配慮)を使います。
「社内の産業医(または保健師)と面談してほしい。これは勤怠の乱れに対する会社のルールだから」と伝え、医療のプロである産業医から「専門医の受診」を強く指示してもらいます。
受診を勧める時は「あなたは会社にとって大切な人材だから、長く働いてもらうためにプロ(医師)のメンテナンスを受けてほしい」という労いのスタンスを貫きます。
働く方
場面 5 / 共通の事実
この段階の記録が、後の判断材料、そしてもし再休職してしまった際の、復職判断の重要な足掛かりとなります。
経営者・人事
受診勧奨から初期対応のプロセスにおいては、休職や復職時に産業医などにスムーズに連携できるよう、「事実(客観的データ)」に絞って、時系列で記録を残すことが鉄則です。
1. 残しておくべき必須記録項目勤怠の乱れ、ミスの発生、異変の観察内容
「〇月〇日 9:30出勤(30分遅刻)。理由:起きられなかったため。今月3回目の遅刻。」のように日時・回数・数字で記録する。
面談時や普段の会話での本人の発言
「元気です」だけでなく、「夜2時間しか眠れていない」「自分がダメだからミスをした」など、本人の言葉をそのまま(「〜」の形で)残す。
伝えた指示、実施した配慮、受診勧奨の内容
「いつ・誰が・どのような理由で受診を勧めたか」「業務量をどう減らしたか」を具体的に記録する。
会社の提案に対する本人の回答
「受診に同意した」「『必要ない』と一度拒否したが、〇月〇日に産業医面談を受けることで合意した」など。
「本人はやる気を失っており、メンタルが壊れかけているようだ」などの主観とは分けて記載してください。客観的事実を記載すること。メールやチャットの履歴(一次情報)も併せて保存しておきます。
記録の目的は、本人を追及するためではなく「会社が安全配慮義務を果たすために、どのような事実に基づいて、どんな配慮や助言を行ったか」というプロセス(過程)を可視化することです。事実ベースの記録が残っていれば、産業医への相談や、休職・判定手続きへ進む際にも迷いなくスムーズに判断を下すことができます。
面談記録チェックシートをダウンロード →働く方
場面 6 / 共通の事実
通院している従業員が、診断書を出さないことがあります。このとき「診断書を出さない=休職を拒否している(困った社員である)」と考えるのは適切ではありません。
経営者・人事
確認すべきなのは、診断名ではなく、現在の状態で勤務を続けられるのか、仕事上どのような配慮が必要なのかです。
「診断書を出してください」だけで終わらせない本人に診断書の提出を求めるときは、「休職させるため」と受け取られないように伝えることが大切です。たとえば、次のように説明します。
「休職を求めているわけではありません。現在の状態で勤務を続けることが可能なのか、必要な配慮があるのかを確認したいので、主治医の先生の意見を確認させてください。」
このように伝えることで「診断書を出す=休職になる」という不安を和らげ、圧迫感を減らすことができます。
主治医に「就業について」確認する通院しながら働く場合、主治医には病状だけでなく、就業継続について意見をもらうことがあります。会社側で勤務情報を整理し、本人を通じて主治医に確認してもらいます。確認したいのは、たとえば次のようなことです。
主治医の意見書は、休職させるためだけのものではありません。通院しながら働くために、必要な配慮を確認するためにも使えます。
特に、以下のような場合に、会社としては(就業継続に必要な)医学的な情報を確認する必要があります。
医学的な情報がない状態では、会社として安全に勤務を続けられるか判断できないということを本人に説明します。
本人の「働きたい」という気持ちと、会社が「問題なく働ける」と判断できるかは、別の問題です。
「休職したくない」という本人の気持ちも尊重する本人が「休職したくない」と考えることは自然です。収入の不安、職場に迷惑をかける不安、戻れなくなるのではないかという不安を感じている場合もあります。本人の意向は丁寧に確認し、本人の希望を無視して「メンタル不調だから休ませる」という進め方にはしない。
ですが、本人の「大丈夫です」「働けます」の言葉だけで、就業継続を判断することはできません。
診断書は「休職のため」だけのものではない診断書や主治医意見書は、本人を休職させるためだけのものではありません。通院しながら働けるのか、どのような配慮があれば働き続けられるのかを確認するための資料でもあります。
診断書を出さない本人を責めるのではなく、まずは、本人が働き続けるために何を確認すべきかを整理します。
そのうえで、本人の意向、主治医の意見、会社が把握している勤務状況をもとに、休職が必要なのか、業務軽減で対応できるのか、治療と仕事の両立支援で進めるのかを判断していくことが大切です。
働く方
通院していても、診断書を出すことや休職を申し出ることに抵抗があるかもしれません。「休んだら迷惑をかける」「休職したら、このまま仕事を辞めることになるのでは」と考えてしまうこともあります。
でも、休職はキャリアの終わりでも、辞めなければいけないわけでもありません。
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