復職後の業務軽減、配慮とフォロー|6 復職直後|メンタル不調による休職|つくる
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予防 自己点検10問 Switch⇄
時間軸 0 初期異変 1 初動 2 休職前の面談 3 休職中 4 試し出勤 5 復職判定 6 復職直後 7 再休職 8 雇用終了 9 まとめ

Chapter 6 — First six months

復職直後復職後の業務軽減、配慮とフォロー

復職できても、再休職することは珍しいことではありません。
復職はゴールではありません。最も警戒しなければならない期間の、入口に過ぎません。

いま読んでいるのは 経営者・人事の視点 休職規程にはふたつの側面があります。

場面 1 / 共通の事実

「戻ってきた」からこそ、支える

復職したことで、完了したわけではありません。
復職直後は、本人が自覚している以上に、心身へ大きな負荷がかかりやすい時期です。

経営者・人事

復職後も一定割合で再休職に至ってしまうケースは少なくありません。復職支援プログラムにそって、復職直後こそ綿密なフォローアップを行います。

やることは2つです。

① 見直しの日を、カレンダーに入れる

「様子を見て」ではなく、具体的な日付を先に決めてしまいます。例えば、復職後1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月など、予定として押さえてください。

② 見る担当を決めておく

直属の上司だけに任せない方がベターです。上司は業務を回す立場なので、戻ってほしいという期待がどうしても入ります。違う視点があるとよいでしょう。

働く方

復職できたことは、大きな一歩です

ここまで来るまでに、きっといろいろな不安があったと思います。
でも、復職した日がゴールではありません。

復職後しばらくは、「もう大丈夫」と思って頑張りすぎたり、周囲に合わせようと無理をしたりしやすい時期です。再び調子を崩して休む人もいます。それは、意志が弱いからでも、失敗したからでもありません。体調が安定するまでには時間がかかることがあります。

だからこそ、復職できたことをきっかけに、急いで「元の自分」に戻ろうしないでください。

通院も、必要な間は続けてください。
体調や仕事の状況を記録することも続けてみましょう。

復職を機に、すぐに全部やめてしまうと、少しずつ変化していることに気づきにくくなることがあります。

「今日は少し疲れた」「前より眠れなくなってきた」など、小さな変化も大切なサインです。

そして、もしもう一度休むことになったとしても、それは失敗ではありません。
必要なときに立ち止まることも、働き続けるための大切な選択です。

復職のゴールは、「もう休職しないこと」ではありません。
自分の状態に気づきながら、無理なく働き続けられることです。

場面 2 / 共通の事実

復職に向けた配慮

会社は復職した従業員に対し、その健康状態に応じて業務内容や労働時間を調整し、過度な負担がかからないように配慮する義務があります。

経営者・人事

基本項目

復職前に、ここにあるような内容で、その人に合った個別の復職支援プラン内容を組み立てます。業務や個人により異なり、例示全てをやる必要はありません。

① 時間に関するもの例
—所定労働時間を短くする(例:6時間から始めて、月ごとに段階的に戻す)
—時差出勤を認める(通勤ラッシュの負担を外す効果があります)
—残業をさせない(「原則なし」ではなく、禁止にしてください。原則は破られます)
—休日出勤をさせない(不定形な勤務をさせない)
—週の途中に休みを入れる(週5連続のフル出社が難しい場合)
—中抜けや休憩の追加を認める(通院、服薬、横になる時間)

時差出勤と週半ばの休みからはじめると、疲労やストレスが限界に達する前に休息が入るため、再発の芽を早期に摘むことができます。朝が最も体調が重く、夕方にかけて楽になるという、体調の日内変動の波は多いですが、夕方にかけて重くなる逆のパターンもあります。

② 業務に関するもの例
—締切が動かせない業務から外す
—単独で完結する業務から外す(代われる人がいない状態を作らない)
—緊急対応、クレーム対応から外す
—深夜・休日の連絡対応から外す
—出張、遠方の移動をなくす
—会議の出席を減らす(特に、発言や判断を求められるもの)
—同時案件の数を制限する(量より、切り替えの回数が負担になります)

見落とされやすいのが、最後の項目です。1件を長くやる方が、3件を少しずつやるより楽です。時間ではなく、切り替えの数で見てください。

クリエイティブの現場では、「戻れる案件がない」という問題が起きます。進行中の案件は途中から入れず、新規はキックオフを待つことになる。この場合、案件外の業務を先に用意しておく必要があります。資料整理、ナレッジの棚卸し、定型補助作業など。復職前に決めておいてください。

③ 環境に関するもの例
—席を変える(人の動きが少ない場所、通路から外れた場所)
—在宅勤務を組み合わせる(ただし後述の注意があります)
—静かな場所を確保する(休憩できる場所。会議室でも構いません)
—連絡手段を絞る(チャット、メール、口頭が同時に来る状態をやめる)

在宅勤務には、注意が要ります。

通勤の負担は減りますが、在宅勤務だとブレーキが効かなくなる人もいます。孤立が進みやすいため、取り戻そうとするあまり、誰の目も届かない場所で限界まで追い込んでしまい「ある日突然、連絡が取れなくなる(重症化する)」ケースです。孤立や長時間化に注意し、本人・医師等と個別判断してください。

④ 支援体制に関するもの
—相談する相手を決める(直属の上司とは別に、もう1人)
—定期的に話す場を持つ(週1回、10分でも構いません)
—通院日を勤務日として扱うか決める(有給を使わせるのか、通院時間を認めるのか)
—主治医との連携方法を決めておく(誰が、どういう場合に照会するか)

相談相手を2人にするのは、意図があります。直属の上司には、業務を回したいという立場があります。本人もそれを分かっているので、上司には言いにくいことが出ます。人事、産業保健の担当、別部署の管理職。利害のない相手を1人用意してください。

やってはいけないこと

配慮の名目で、これをしないでください。

—実質的に仕事をなくす(席はあるが、やることがない状態)
—情報から外す(大事な会議に呼ばない、共有に入れない)
—見通しを示さないまま、軽減を続ける(いつ戻るのか分からない状態)
—本人に確認せずに決める

どれも善意で起きます。そして、どれも再発の要因になります。

特に情報から外すことは、本人が最も敏感に気づきます。会議に呼ばれなくなった、メールのccから外れた。業務量を減らすことと、蚊帳の外に置くことは違います。

書面に落とすとき

これらの配慮は、開始当時決めた内容を、見直す期間つきで書いてください。見直し時期が入っていない配慮は、既定になります。そして戻せなくなります。

働く方

「こうしてもらえると助かります」と伝えてみましょう
復職するとき、会社にどこまでお願いしていいのか迷うかもしれません。
「自分だけ配慮してもらうのは申し訳ない」
「どこまでがお願いしていいことなのかわからない」
そんなふうに思う必要はありません。
配慮をお願いすることは、特別扱いを求めることではありません。
無理なく働き続けるために、今の自分に必要なことを伝えることです。

たとえば、
① 時間のこと
-最初は短い勤務時間から始めたい
-朝の時間帯がつらいので、始業を少し遅くしたい
-しばらく残業をなくしたい
-通院の時間を確保したい
② 仕事のこと
-最初は短い勤務時間から始めたい
-朝の時間帯がつらいので、始業を少し遅くしたい
-しばらく残業をなくしたい
-通院の時間を確保したい
③ 環境のこと
-人の出入りが少ない席で仕事をしたい
-調子が悪くなったときに休める場所がほしい
-連絡手段を一つにまとめてほしい
④ 相談のこと
-上司以外にも相談できる人がいると安心する
-定期的に状況を確認する機会がほしい
言い方は、こう伝わりやすいです

「体調が悪いので」ではなく、何がどうきついのかを伝えてください。

✕「まだきついです」 ○「朝が起きられないので、始業を1時間遅くできませんか」
✕「仕事が多いです」 ○「3件同時に持つと切り替えが追いつきません。1件にできませんか」

会社は、要望があった範囲を元に調整します。

在宅勤務について

在宅勤務については、通勤とはまた違う注意が必要です。仕事のリズムが崩れやすく、一人になる時間が長くなります。負担が大きくなり、調子が悪くなっていっても、誰も気づくことができません。もし在宅勤務にする場合は、孤立化、長時間化に注意して始めましょう。

仕事を減らされすぎたと感じたら…

やることが少なすぎる。会議に呼ばれない。情報が回ってこない。もし余裕があるようなら、可能な範囲を伝えてみましょう。

会社が負担を減らそうとした結果、減らし過ぎている場合があります。

「もう少し任せてもらえると思います」
「あの会議には、出ておきたいです」

無理は禁物ですが、意欲は伝えてください。

場面 3 / 共通の事実

勤務時間と業務内容を、どう戻していくか

復職直後は、短時間勤務や残業制限、業務量の調整などを行うことがあります。
問題は、どの順番で、どのくらいの速さで戻すかです。

経営者・人事

① 最初から「いつ元に戻すか」の期日を固定しすぎない

復職した、〇か月経った、そのことだけを理由に、すぐに休職前の勤務時間・業務量へ戻すのではなく、まずは現在の勤務条件で安定して働けるかを確認します。

②「体調」だけでなく「実際に仕事ができているか」を見る

たとえば、次のような復職後の実際の勤務状況を確認します。

—定めた勤務時間を継続して勤務できている
—遅刻・早退・欠勤が増えていない
—業務上のミスが大きく増えていない
—集中して業務に取り組めている
—疲労が翌日まで大きく残っていない
—本人から過度な負担の訴えがない

「本人が元気そうだから」「本人が大丈夫と言ったから」だけで判断しないことがポイントです。

③ 一度に全部戻さない

勤務時間と業務量を同時に大きく増やすのではなく、変更する要素を分けて段階的に戻す方法があります。たとえば、次のようなイメージです。

1短時間勤務
2勤務時間を少し延ばす
3通常勤務時間へ
4業務量・担当範囲を段階的に戻す
5必要に応じて残業・繁忙業務等を検討

順番は、できれば時間を先にしてください。

勤務時間は、量の問題です。調整しやすく、影響も見えやすい。業務内容は、質の問題です。責任の重さ、判断の量、対人のやりとり。ここが負担になっている場合、時間を短くしてもあまり負担感が変わりません。

④ 戻した後に「大丈夫だったか」を確認する

勤務時間や業務内容を増やしたら、それで終わりではありません。変更後に、「その条件で継続して働けているか」を確認します。

負担が大きければ、いったん前の段階に戻すことも選択肢です。

これは「失敗」ではなく、再休職を防ぐための調整です。

⑤ 絶対に避けたいこと 「恩返し型の復職」

本人側に、「休んでいる間、みんなに迷惑をかけた」「もう復職したのだから頑張らないと」「早く元の仕事を全部取り戻さないと」という気持ちがあると、復職直後に一気に仕事量を増やしてしまうことがあります。

会社側からも、次のように明確に伝えておいてください。

「復職した=休職前と同じ状態に戻った、ではありません」

むしろ、無理なく働き続けられる状態を確認しながら、少しずつ通常勤務に近づけていくこと自体が復職支援です。

働く方

「早く元通りに」ではなく、少しずつ

まずは復職時に決めていた勤務時間・業務量で無理なく続けられるかを確認し、安定してきたら、少しずつ復職前の勤務に近づけていきます。

短時間勤務がフルタイム勤務に戻っても、業務量はまだ増やさない。
業務を増やしてみて負担が大きければ、いったん前の段階に戻す。

そんな調整があっても大丈夫です。
「頑張ればできるか」ではなく、「無理なく続けられるか」を基準にしてください。

疲れが強くなったり、以前と違う変化を感じたりしたときは、我慢せずに早めに相談しましょう。
確認しておくこと
—いつ、何を戻す予定か
—次に見直すのはいつか
—戻したあと、つらくなってきたらどうするか
復職すると、「早く休職前の状態に戻らなければ」と焦ってしまうかもしれません。
でも、勤務時間も業務内容も、急いで元に戻す必要はありません。

復職の目標は、早く元に戻ることではなく、無理なく働き続けられる状態をつくることです。

場面 4 / 共通の事実

業務軽減に伴う労働条件の変更

職場復帰にあたって、労働条件そのものを見直す場合があります。

経営者・人事

ここは、3つに分けて考えてください。
原則として、使用者が、労働者の合意なく、労働契約を一方的に変更することはできません。個別の同意が必要です。

① 働いていない時間の分が減る

時短勤務にし、結果その分の給与が減るのは、不利益変更や権利の乱用とみなされるリスクがあります。時短勤務は基本的に必要な措置ですが、医学的見地と本人の希望を元に勤務時間を決め、本人と合意(同意書の回収)を行ってください。

② 職位に紐づくものがなくなる

役職を外れたので、役職手当がなくなる。賃金規程で「役職手当は当該職位にある者に支給する」と定めていれば、可能です。職位を解けば、手当も外れます。

健康上の理由で管理職の職責を果たせない状態であれば、職位を解くことに一定の合理性があります。安全配慮義務上の措置でありますが、影響が大きい人事権の行使にあたります。必ず本人への丁寧な説明と合意形成をとってください。次の項目が根拠となります。

—就業規則や役職規程に「心身の障害により業務に耐えられないと認められるとき」「組織上の必要性があるとき」などの降格・役職解任に関する根拠条文があるか
—主治医の診断書や面談結果から、「過度な責任やプレッシャーのある業務は避けるべき」「残業不可」といった制限が出ていること

できれば、復職後の「再昇格のロードマップ」を提示して下さい。

③ 基本給や単価そのものを下げる

業務軽減を理由として「基本給(基本給の単価)」そのものを下げることは、原則として認められません。職務を変更さぜるを得ないことによる減給は、復職直後では適切ではありません。復職直後は安全配慮義務の履行期間です。「本人の勤務状態が安定し、評価(能力や役割のギャップ)を判定できる状態になったか」という実績とプロセスの蓄積で判断してください。

働く方

軽減して働くということは、労働条件が変わるということです。変わり方には、種類があります。

① 働いていない時間の分が減る

6時間勤務になったので、その分が減る。これは自然なことです。

② 役職を外れて、役職手当がなくなる

会社の規程に「役職手当は、その役職にある人に支給する」と書かれていれば、外れます。役職を外れることは処分ではありません。責任の重い立場が負担になっている場合、健康上の理由でいったん外れることがあります。

③ 基本給そのものが下がる

精神的負担を軽減するために、専門業務から単純定型業務へ変更など、職種や役割が明確に変わり、それに伴う賃金体系(バンドグレード)の適用変更の場合、基本給そのものが下がります。こういった職務の変更にはあなたの同意が必要です。

②と③は、別の話です。混ざって説明されることがあるので、分けて聞いてください。

場面 5 / 共通の事実

周りの人のこと

フォローしていた人がいます。
そして、フォローしてくれていた人の負担は、復職してもすぐには軽くなりません。

経営者・人事

見落とされがちなので注意です。

休職中、誰かが仕事を引き受けています。復職しても多くは、フォローしてくれた人の負担はまだ残っています。放置すると、以下のような懸念が出ます。

—フォローしている人が、次に不調になる
—「あの人だけ配慮される」という空気ができる
—本人が、その空気を感じ取って職場全体がギクシャクする

完全には防げないかもしれませんが、少なくとも無理の連鎖は断ち切り、不公平感のないようにする必要があります。

やることは2つです。

① 一時的な負担は一時的で完了させる

本来一時的な負担のはずなので、その終わりの見通しを伝えてください。もし恒久的な負担増なら、きちんとした担当割り当てが必要です。

② 評価に反映する

また、フォローしたことは、評価の場で扱ってください。事実、その人個人の仕事が増えたのなら、賃金や評価での還元が必要です。

なお、仕事をフォローしてもらうにあたり、本人が自ら話したいと希望している場合を除き、本人の病名や状態を話してはいけません(プライバシー保護)。同僚に共有するのは、業務上の制限とその期間についてだけです。

働く方

「取り返そう」としなくて大丈夫です

復職すると、「休んでいる間に周りに迷惑をかけた」「仕事を代わってもらった分を取り戻さなければ」と焦ってしまうかもしれません。

でも、復職は以前と同じ量の仕事をすぐにこなすことではありません。

休職中に周囲が引き受けてくれた仕事を、復職した途端にすべて取り戻そうとすると、無理が重なってしまうことがあります。まずは、今の体調で無理なく続けられるペースをつくることを優先してください。

「申し訳なかった」という気持ちは、無理をすることではなく、安定して働き続けることで十分に返していけます。

体調に変化を感じたときは、「せっかく復職したのだから」と我慢せず、早めに上司や主治医に相談してください。

復職のゴールは、休職前の状態を取り戻すことではありません。
働き続けられる状態をつくることです。

Next — Chapter 7

再休職

再休職を検討すべきとき。再休職という選択。

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Author

千葉若菜

千葉若菜 特定社会保険労務士

エンタメ専門社労士事務所 つくる Creative Workforce Support
音楽業界歴20年の社労士

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