休職前面談で確認すること、聞いてはいけないこと|2 休職前の面談|メンタル不調による休職|つくる
つくる ロゴ つくる エンタメ専門社労士事務所 Creative Workforce Support メンタル不調 休職・復職ガイド|会社の対応と制度設計
メンタル不調による休職 採用とSNS 就業規則予定 人事デューデリジェンス(人事DD)予定 / メンタル不調による休職 / 2 休職前の面談
予防 自己点検10問 Switch⇄
時間軸 0 初期異変 1 初動 2 休職前の面談 3 休職中 4 試し出勤 5 復職判定 6 復職直後 7 再休職 8 雇用終了 9 まとめ

Chapter 2 — The first meeting

休職前の面談
休職前面談の目的は、本人の病気の詳しい内容や家庭の事情を聞き出す場ではありません。

この面談は、休職に入るにあたっての必要な手続きや、休職中の連絡方法、給与・社会保険料、復職に向けた流れなどを確認するためのものです。

いま読んでいるのは 経営者・人事の視点 休職規程にはふたつの側面があります。

場面 1 / 共通の事実

面談の内容

本人が自分から話す範囲で事情を聞くことはありますが、会社側から病状や家庭の事情を深く掘り下げて聞くことは避けるべきです。病歴や治療内容は、本人の同意なく集めてよい情報ではありません。

また、休職前の本人は、心身ともに負担が大きい状態であることが多くあります。面談はできるだけ短く行い、30分程度を目安にするとよいでしょう。面談そのものが本人の負担にならないよう、会社側で事前に確認事項を整理しておくことが大切です。

経営者・人事

—いつから休むのか
—引継ぎはどこまで行うのか
—周囲への伝え方
—給与が止まる時期
—社会保険料の支払い方法
—休職中の連絡方法と頻度
—緊急連絡先
—復職の意思確認と復職手続き
1. いつから休むのか

まず、休職をいつから開始するのかを確認します。

有給休暇を使ってから休職に入るのか、有給休暇を使わず欠勤として扱う期間があるのか、いつから正式に休職となるのか、また、満了日がいつになるのかを、本人にも分かる形で整理しておいた上で、本人に説明します。(詳細は1 初動 場面2)

2. 引継ぎはどこまで行うのか

休職前には、必要最小限の引継ぎを確認します。確認すべきなのは、現場が止まらないために必要な最低限の情報です。

(詳細は1 初動 場面4)

3. 周囲への伝え方

休職に入る際には、職場の上司や同僚にどのように伝えるかも確認しておきます。休職により、担当業務の引継ぎや人員調整が必要になるため、職場内で一定の情報共有は必要です。ただし、病名や詳しい症状、治療内容は本人の大切な個人情報です。本人の同意なく、会社が周囲に伝えることはできません。

基本的には、「体調不良により一定期間休職します」「療養のため、しばらくお休みします」といった説明にとどめることが考えられますが、本人の意向で、病名や詳しい病状を伝えてほしい場合もあります。

取引先にも業務上必要な範囲では、休職期間の見込み、担当業務の引継ぎ先、連絡窓口などを共有する必要があります。その伝え方を確認してください。

4. 給与が止まる時期と社会保険料の支払い方法

休職中は、ノーワーク・ノーペイの原則により、会社からの給与が支払われない期間が発生することがあります。

ただし、健康保険の要件を満たす場合には、傷病手当金の支給対象になることがあります。傷病手当金は、病気やけがのために仕事を休み、会社から十分な給与を受けられない場合に、生活を支えるために支給される制度です。(詳細は3 休職中 場面1)

一方で、休職中も社会保険料の本人負担分は原則として発生します。給与が支払われない場合でも、健康保険料や厚生年金保険料などをどのように支払うのかを、事前に確認しておく必要があります。(詳細は3 休職中 場面2)

後で認識違いが起きないよう、傷病手当金のための書類の受け渡しと、社会保険料の支払い方法についてを本人に説明し、書面でも確認できるようにしておくと安心です。

5. 休職中の連絡方法と頻度

休職中も、会社から本人へ連絡が必要になることがあります。たとえば、次のような連絡です。

—体調や療養状況の確認
—診断書の再提出依頼
—傷病手当金などの事務手続き
—休職期間の確認
—復職意思の確認
—復職手続きの案内

休職中の連絡は、月1回程度を目安にすることが一般的です。本人の体調に配慮し、必要以上に頻繁な連絡は避けます。

また、連絡窓口はできるだけ一人に絞ることが望ましいです。複数の上司や部署から別々に連絡すると、本人の負担が大きくなり、情報の行き違いも起きやすくなります。面談時には、連絡方法を確認しておきます。

—電話
—メール
—郵送
—チャットツール
—家族経由の連絡が必要な場合

本人の状態に応じて、無理のない方法で

—誰が連絡するか
—どのくらいの頻度か

を決めます。

6. 緊急連絡先と書類送付先

休職中は、本人と連絡が取りにくくなることがあります。そのため、緊急連絡先と書類送付先を確認しておくことも大切です。ただし、ここは慎重に扱う必要があります。

入社時に緊急連絡先を提出していても、休職時には事情が変わっていることがあります。実家で療養する場合や、入院する場合もあります。また、病気のことを家族に伝えていないケースもあります。そのため、次の点を本人に確認しておきます。

—休職中の書類送付先
—本人と連絡が取れない場合の緊急連絡先
—緊急連絡先の相手に、どこまで事情を伝えてよいか
—家族に病名や休職理由を伝えてよいか
—郵送物の宛名や送付方法に配慮が必要か

緊急連絡先があるからといって、会社が自由に病状や休職理由を伝えてよいわけではありません。本人のプライバシーに配慮し、どこまで開示してよいかを確認しておくことが必要です。

7. 復職の意思確認と手続き

休職に入る時点で、復職に向けた手続きも説明しておきます。

復職は、休職期間が終わったから自動的に決まるものではありません。本人から復職したいという意思表示があり、医師の診断書が提出され、会社が業務遂行可能性や職場の受入体制を確認したうえで判断します。

そのため、休職期間の満了日より前に、復職の意思確認を行う必要があります。定期連絡の際に、復職の見込みや本人の意思を確認できるとよいでしょう。復職を希望する場合には、一般的に次の書類を提出してもらいます。

—復職願
—復職可能であることを示す診断書

リハビリ勤務や試し出勤の制度がある場合には、その手続きも説明します。制度がない場合は、通常の復職手続きとして、復職願と診断書をもとに復職可否を判断します。

復職判定の詳細は、5 復職判定へ。

面談内容は書面にして渡す

休職前面談で確認した内容は、必ず書面にして本人へ渡します。休職に入る時期は、本人が体調面でも精神面でも余裕がないことが多く、口頭で説明された内容をすべて覚えておくことは難しいものです。そのため、面談後には、次のような内容をまとめた書面を渡すとよいでしょう。

—休職開始日
—休職期間満了日
—休職中の給与の取扱い
—社会保険料の支払い方法
—傷病手当金の案内
—休職中の連絡方法と頻度
—緊急連絡先と書類送付先
—診断書の再提出時期
—復職を希望する場合の手続き
—休職期間満了時の取扱い

休職前面談は、本人を問い詰める場ではありません。本人が安心して療養に入れるように、必要な手続きと今後の流れを整理し、会社と本人の認識をそろえる場です。

休職開始時説明チェックリストをダウンロード →

働く方

この面談は、評価したり、原因の追究や、復職を責めたりするためのものでありません。安心して休むための手続きを一緒に行う場です。体調をすべて説明する必要もありません。もし伝えたいことがあれば、伝えておくのは構いませんが、無理に話さなくても大丈夫です。

休職前の面談では、休職中の手続きや連絡方法について確認します。病気の詳しい内容や家庭の事情を、無理に話す必要はありません。

主に確認するのは、次のようなことです。

1. いつから休むか

有給休暇を使うのか、欠勤になる期間があるのか、いつから休職になるのかを確認します。

2. 引継ぎについて

今進んでいる仕事、期限、資料の場所など、伝えられる範囲で共有します。完璧な引継ぎを無理にする必要はありません。

3. 職場への伝え方について

病名や詳しい病状は、本人の同意なく周囲に伝えられることはありません。職場にどのように伝えるかを確認します。

4. 給与と社会保険料について

休職中は給与が止まることがあります。傷病手当金の手続きや、社会保険料の支払い方法を確認します。

5. 休職中の連絡方法について

会社とどの方法で、どのくらいの頻度で連絡を取るかを決めます。連絡窓口も確認しておきます。

6. 緊急連絡先について

本人と連絡が取れない場合の連絡先や、書類の送付先を確認します。家族などにどこまで伝えてよいかも確認します。

7. 復職の手続きについて

復職を希望するときに必要な書類や、診断書の提出、会社の判断の流れを確認します。

面談で決めた内容は、あとから確認できるように、書面でもらっておくと安心です。

場面 2 / 共通の事実

「辞めます」と言われたとき

このとき、すぐに退職届を求めるのではなく、まず本人の状態を確認します。退職を認めないという意味ではありません。  大きな決断を、その場の不安や混乱の中で急がせないためです。

経営者・人事

まず、本人の気持ちを受け止める

本人から退職の話が出たら、まずは退職したいという気持ちを受け止めます。たとえば、次のように伝えます。

「退職したいというお気持ちはわかりました。ただ、今は通院もされていますし、大きな決断なので、今日ここで結論を出さなくても大丈夫です。まず主治医の先生にも、今の状態や仕事のことを相談してみませんか。」

ここで大切なのは、退職を引き止めることではありません。今すぐ退職を決めなくてもよいこと、他の選択肢もあることを伝えることです。

退職したい理由を確認する

退職の意向が出た場合でも、「メンタル不調だから正常な判断ができていない」と決めつけてはいけません。本人の言葉で、なぜ退職したいのかを確認します。たとえば、次のような理由が考えられます。

—仕事そのものを続けることがつらい
—今の業務内容を続けることが難しい
—会社に迷惑をかけると思っている
—休職すると復帰できないと思っている
—介護など、仕事以外の事情がある
—今は大きな判断をする余裕がない

会社側の記録では、本人の発言を事実として残します。たとえば、「本人より『退職したい』との発言あり」「本人より『会社に迷惑をかけたくない』との発言あり」という形です。

一方で、「本人は正常な判断ができないと思われる」といった評価や聞き手の主観は、事実と分けて扱う必要があります。

退職以外の選択肢を説明する

本人が退職を考えている場合でも、選択肢は「退職する」か「無理して働き続ける」だけではありません。会社の制度や本人の状態によっては、次のような対応を検討できる場合があります。

—休職する
—勤務時間を短くする
—業務量を一時的に減らす
—負荷の高い業務を外す
—配置転換を検討する
—通院に配慮する
—治療と仕事の両立支援として進める

厚生労働省の両立支援の考え方でも、病気であることだけを理由に安易に就業を禁止するのではなく、主治医や産業医等の意見を踏まえ、可能な限り配置転換や労働時間の短縮などの措置を検討することが示されています。そのため、本人には次のように伝えるとよいでしょう。

「退職するか、無理して働くかの二択ではありません。休職や業務軽減、勤務時間の調整など、検討できる方法があるかもしれません。まず主治医の先生に、現在の状態と仕事について相談してみましょう。」

主治医にも「退職したい」と考えていることを伝えてもらう

本人が会社には「もう辞めたい」と言っている一方で、主治医には「仕事は問題ないです」と伝えている場合、主治医は実際の職場での困りごとを把握できません。そのため、本人には、退職を考えていることも含めて主治医に相談してもらうことが大切です。

あわせて、会社側から勤務情報を整理して本人に渡し、主治医に確認してもらう方法もあります。たとえば、次のような情報です。

—現在の業務内容
—1日の業務量
—残業の有無
—通勤時間
—忙しい時期
—対人対応や突発対応の有無
—会社として配慮できる可能性があること

「退職届を出すかどうか」を先に決めるのではなく、まず医療的な意見を確認し、働き続ける方法があるかを整理します。

退職を止めるのではなく、急がせない

注意したいのは、「メンタル不調だから退職を受理してはいけない」という意味ではないことです。本人が十分な説明を受け、考える時間を持ち、主治医への相談なども行ったうえで、それでも退職を希望する場合には、その意思を尊重する必要があります。

会社が一方的に、「あなたは体調が悪いから退職できません」と判断するものではありません。大切なのは、退職を止めることではありません。本人がその場の不安だけで退職を決めてしまわないように、選択肢と相談先を示すことです。

体調不良時の退職の申し出は、会社にとっても慎重な対応が必要です。本人の意思を確認し、退職以外の選択肢も伝えたうえで、本人が納得して判断できるように進めることが大切です。

働く方

仕事がつらくなったとき、「もう辞めるしかない」と思ってしまうことがあります。
でも、退職するか、無理をして働き続けるかの二択ではありません。

休職していったん仕事から離れる、勤務時間や業務を調整する、職場で必要な配慮を受けながら働くなど、状況によってさまざまな方法があります。

知っておいてほしいことが、3つあります
在職中 ① 休職中は、お金が出る場合があります

健康保険から傷病手当金が出ます。給与のおよそ3分の2です。

退職後 ② 辞めても、続けて受給できる場合があります

ただし条件があります。在籍時に受け始めていることが条件のひとつです。受け始める前に辞めると、この条件を満たせません。

退職後 ③ 失業給付は、すぐには受けられません

失業給付は「働ける状態の人」が対象です。療養中は対象外です。ただし、受け取れる期間を先延ばしにする手続きがあります。これをしておかないと、回復したときに受け取れなくなることがあります。期限があります。

もし今、通院しているのであれば、「仕事を辞めたいと思っている」ことも含めて、主治医にそのまま話してみてください。退職は、あとから撤回することが簡単な決断ではありません。だからこそ、今の状態で大きな決断を急がず、まず専門家と一緒に選択肢を整理してください。

場面 3 / 共通の事実

休職せずに業務軽減で対応する場合

診断書が出たら必ず休職、ではありません。
働き方を変えることで、続けられる場合があります。

経営者・人事

選択肢は、休職か退職かの2つではありません。本人が希望していなかったり、診断書の記載が「業務の軽減があれば就業可能」となっていた場合、いきなり休職させるのは適切ではありません。

—労働時間を短くする
—残業をなくす
—担当業務を減らす、または変える
—配置を変える

こういった対応も考えられます。ですが、軽減業務であっても、職場環境や人間関係が原因の場合、出勤すること自体が強いストレスになっていることもあり、軽減しても改善しない場合があります。

ただし、業務軽減を行う場合には、注意が必要です。

「簡単な仕事に変える」
「責任の軽い仕事にする」

こういう伝え方をすると、本人が評価を下げられた、能力がないと判断された、と受け止めることがあります。業務軽減は、評価を下げるためのものではありません。また、職位や職責を変更する場合には、さらに慎重な判断が必要です。

なお、どの程度まで業務を軽減すればよいかは、会社だけで判断しにくい場合があります。

主治医に相談する方法もありますが、主治医は本人の病状を把握していても、会社の具体的な業務内容や職場環境までは分からないことが多くあります。そのため、可能であれば、産業医や、業務内容を理解できる医師に相談し、どのような業務制限が必要かを確認することが望ましいです。

業務軽減例
—担当業務を一時的に減らす
—責任の重い業務を外す
—窓口対応やクレーム対応を控える
—残業や休日勤務を制限する
—短時間勤務にする
—単独対応ではなく、複数名で対応する
—締め切りの厳しい業務から外す

業務軽減を行う場合は、一時的な配慮として、内容・期間・見直し時期を明確にしておくことが重要です。

本人の健康状態、医師の意見、実際の業務内容、職場の受入体制を確認しながら、無理なく働ける方法を検討することが大切です。

働く方

診断書の提出=必ず休職、ではありません

働き方を変えることで、続けられる場合があります。時間を短くする。残業をやめる。担当を変える。主治医に相談してみてください。「休むほどではないが、この条件なら働ける」という診断書が出ることがあります。

「簡単な仕事に変えられた」
「責任のある仕事を外された」

と感じ、不安になることもあるかもしれませんが、業務軽減は、無理をしないための方法です。

主治医は病状をよく知っていますが、会社の仕事の内容までは詳しく分からないことがあります。そのため、必要に応じて、産業医や、仕事内容を理解している医師に相談しながら、無理のない働き方を考えることがあります。

Next — Chapter 3

休職中

給与が止まる時期、保険料と住民税、連絡の設計。お金はどうなるか。会社とどう連絡を取るか。

3 休職中を読む →

Author

千葉若菜

千葉若菜 特定社会保険労務士

エンタメ専門社労士事務所 つくる Creative Workforce Support
音楽業界歴20年の社労士

プロフィール →