復職判定の基準と主治医の診断書|5 復職判定|メンタル不調による休職|つくる
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時間軸 0 初期異変 1 初動 2 休職前の面談 3 休職中 4 試し出勤 5 復職判定 6 復職直後 7 再休職 8 雇用終了 9 まとめ

Chapter 5 — Return to work

復職判定復職判定の基準と主治医の診断書

本人との定期連絡で復職の意思を確認し、直近の診断書にも「復職可」と書いてある。それでも会社は認められないことがある。

いま読んでいるのは 経営者・人事の視点 休職規程にはふたつの側面があります。

場面 1 / 共通の事実

「復職可」とはどういう状態なのか

「治っているか」ではありません。
「その仕事ができるか」です。

経営者・人事

復職判断で最初に整理しておきたいのは、会社にとっての「復職可」とは何を意味するのか、という点です。ここがあいまいなままだと、本人、主治医、会社の間で認識のずれが起きやすくなります。

たとえば、診断書に「復職可」と書かれていても、それがすぐに休職前と同じ働き方ができるという意味とは限りません。短時間勤務であれば働ける、軽い作業であれば可能、職場の配慮があれば就労できる、という意味で「復職可」とされている場合もあります。

そのため、会社としては、単に「診断書に復職可と書かれているか」だけではなく、どの程度の業務ができる状態なのかを確認する必要があります。

目指すのは「休職前の通常業務に戻れる状態」

復職可とは、基本的には、休職前に担当していた業務を、休職前と同じ程度に、支障なく行える健康状態であることを意味します。つまり、確認すべきなのは、病気が完全に治ったかどうかではありません。大切なのは、その仕事ができるかどうかです。

もちろん、復職直後に一定の配慮を行うことはあります。たとえば、残業を控える、通院に配慮する、一時的に業務量を調整する、といった対応です。しかし、最終的に目指すのは、休職前の通常業務に戻れる状態です。

リハビリ勤務や試し出勤を行った場合でも、それは軽作業を続けるための期間ではありません。通常業務に戻れるかを確認するための期間です。

「軽い仕事ならできる」と「復職できる」は同じではない

復職判断で注意したいのは、「軽い仕事ならできる」状態を、そのまま復職可と考えてしまうことです。たとえば、次のような状態です。

—短時間なら出勤できる
—単純作業ならできる
—責任の軽い業務ならできる
—人とのやり取りが少ない仕事ならできる
—急な対応や判断がない業務ならできる

これらは、回復の途中段階としては重要です。しかし、その状態が長期間続き、休職前の業務に戻る見込みが立たない場合には、「通常業務に復職できる状態」とは分けて考える必要があります。

会社が確認すべきなのは、軽い業務ができるかどうかだけではありません。休職前の職務、職責、勤務時間、業務量、対人対応、判断業務などを踏まえて、実際に職場で業務を継続できるかどうかを確認します。

復職判断で確認すること
—所定労働時間で勤務できるか
—安定して出勤できるか
—休職前の業務を行えるか
—業務の質やスピードが大きく低下していないか
—報告・連絡・相談ができるか
—必要な対人対応ができるか
—業務上の指示や注意を受け止められるか
—通勤や勤務後の疲労に大きな問題がないか
—再び体調を崩すおそれが高くないか
—職場側の受入体制に無理がないか

復職は、本人の希望だけで決めるものではありません。また、主治医の診断書だけで自動的に決まるものでもありません。

本人の状態、主治医の意見、産業医等の意見、業務内容、職場の受入体制を踏まえて、会社が総合的に判断します。

「治っているか」ではなく「その仕事ができるか」

復職判断では、「病気が治ったか」という表現に引っ張られすぎないことが大切です。病気や不調が完全になくなっていなくても、業務に支障がない範囲で働ける場合はあります。

一方で、本人が「もう大丈夫です」と言っていても、実際の業務を続けることが難しい状態であれば、復職には慎重な判断が必要です。

復職可とは、単に出社できることではありません。短時間なら働けることでも、軽作業ならできることでもありません。会社が確認すべきなのは、休職前の業務を、継続して、安全に、職場に大きな支障なく行える状態かどうかです。

復職判断の基準をあらかじめ整理しておくことで、本人にとっても会社にとっても、納得感のある復職手続きにつながります。

働く方

「復職可」とは、単に会社に来られる状態という意味ではありません。「その仕事を続けられるかどうか」です。

たとえば

—短時間なら働ける
—軽い仕事ならできる
—配慮があれば働ける

という状態は、回復の途中段階の話です。これは永続的なことではありません。
目指すべきは、休職前の姿です。もちろん休職後すぐそうである必要はありませんが、リハビリ勤務や試し出勤をした場合でも、最終的に目指すのは、休職前の通常業務に戻ることです。

まず生活リズムを整える

準備としていちばん基本になるのは、まず生活のリズムを先に戻しておくことです。

心身ともに疲れて昼夜逆転してしまっていることはよくあります。仕事を再開するにあたって、起きる時間、食事、外に出る時間などを、休職前の状態に戻せるよう、復職の直前ではなく、判定の1〜2ヶ月前から始めておくと、実際に通える状態かどうかが自分でも分かります。

記録があると、なお確かです。休職中につけていた記録が、ここで活きてきます。

場面 2 / 共通の事実

主治医・産業医・会社指定医の役割

主治医からの診断書に「復職可能」と書かれていても、それだけで復職が決められるわけではありません。最終的に判断するのは、会社です。

経営者・人事

「復職可」とは、単に日常生活が送れる状態や、短時間なら働ける状態を指すものではありません。会社が確認しなければならないのは、本人が休職前の業務を、職場で継続して行える状態かどうかです。

そのため、復職判断では、主治医の診断書だけでなく、必要に応じて産業医や会社指定医の意見も確認します。

主治医の診断書だけで判断しきれないことがある

主治医は、本人の病状や治療経過を最もよく把握している医師です。そのため、主治医の診断書は復職判断において重要な資料になります。ただし、主治医が把握しているのは、主に本人の診察時の状態や、本人から聞いた日常生活の様子です。

一方で、会社が判断しなければならないのは、次のような点です。

—実際の業務量に耐えられるか
—所定労働時間で働けるか
—残業や突発対応に耐えられるか
—対人対応や判断業務ができるか
—職場のストレス環境の中で勤務を継続できるか
—休職前の職務や責任を担えるか

主治医は、会社の具体的な業務内容や職場環境まで詳しく把握しているとは限りません。

そのため、診断書に「復職可」と書かれていても、それが「休職前の業務にそのまま戻れる」という意味なのか、「一定の配慮があれば働ける」という意味なのかを確認する必要があります。

産業医は、職場の事情を踏まえて意見を述べる

産業医がいる会社では、復職判断にあたり、産業医の意見を確認することが望ましいです。産業医は、本人の健康状態だけでなく、会社の業務内容や勤務環境を踏まえて、就業上の配慮が必要かどうかを判断します。たとえば、次のような点を確認します。

—通常勤務に戻れる状態か
—短時間勤務や残業制限が必要か
—業務内容を一時的に調整すべきか
—配置や担当業務に配慮が必要か
—復職後に再発や悪化のおそれがないか

本人が「復職したい」と強く希望していることと、実際に復職に耐えられる状態かどうかは別の問題です。

産業医という第三者の専門的な意見を確認することで、無理な復職や再発を防ぎやすくなります。

産業医にも専門分野がある

ただし、産業医であればすべての病気や不調に詳しいというわけではありません。産業医の専門分野はさまざまです。内科、整形外科、皮膚科などを専門とする医師もおり、すべての産業医が精神科や心療内科の専門医というわけではありません。

そのため、内容によっては、産業医だけでなく、専門医の意見が必要になる場合もあります。

大切なのは、「誰か一人の医師の意見だけで決める」のではなく、本人の状態、主治医の診断書、産業医等の意見、実際の業務内容をあわせて確認することです。

会社指定医に意見を求める場合

会社に産業医がいない場合や、より専門的な判断が必要な場合には、会社が指定する医師に意見を求めることがあります。ただし、会社指定医の受診を求める場合には、就業規則などに根拠があるかを確認する必要があります。

就業規則に会社指定医の受診に関する定めがない場合、会社が一方的に受診を命じることは難しく、本人に協力をお願いする形になります。その場合、本人が受診を拒否することもあり得ます。

また、会社指定医への受診を案内するときは、伝え方にも注意が必要です。「主治医の診断書を信用していない」という伝え方になってしまうと、本人の不信感につながります。

伝えるべきなのは、主治医の判断を否定することではありません。会社として、実際の業務内容や職場環境を踏まえて、安全に復職できるかを確認する必要がある、という説明が必要です。

最終的に復職を判断するのは会社

主治医の診断書、産業医の意見、会社指定医の意見は、いずれも復職判断のための重要な資料です。しかし、最終的に復職を認めるかどうかを判断するのは会社です。

会社には、本人を安全に働かせる責任があります。同時に、職場全体の業務運営に支障がないかを確認する責任もあります。そのため、主治医の診断書に「復職可」と書かれている場合でも、会社はその内容を確認し、必要に応じて産業医等の意見を踏まえたうえで、復職の可否や就業上の配慮を判断します。

一方で、本人が主治医の「復職可」の診断書を提出しているにもかかわらず、会社指定医の受診を拒否したことだけを理由に復職を認めない対応は、慎重に判断する必要があります。会社指定医の受診を求める場合には、就業規則上の根拠、受診を求める必要性、本人への説明、費用負担、情報の取扱いを整理しておくことが大切です。

復職判断で重要なのは、「誰の診断書を優先するか」ではありません。本人が実際にその職場で、その業務を、安全に継続できるかどうかです。主治医、産業医、会社指定医の役割を整理し、それぞれの意見を踏まえながら、会社として復職の可否を判断していく必要があります。

働く方

主治医・産業医・会社の判断について

主治医が「復職可能」と書いてくれた。それなのに、会社がすぐ認めてくれない、そんなことがあるかもしれません。復職するときは、主治医の診断書は大切な資料になります。

ただし、主治医が見ているのは、主に病状や日常生活の様子です。会社の仕事の内容や忙しさ、職場の環境まで詳しく知っているとは限りません。

そのため、会社は、診断書だけでなく、産業医や会社が指定する医師の意見を確認することがあります。これは、主治医を疑っているということではありません。実際の仕事に戻っても無理がないかを確認するためです。

主治医に診断書を書いてもらうときは、職場の様子もできるだけ伝えておくとよいでしょう。たとえば、次のようなことです。

—どんな仕事をしているか
—1日の仕事量はどのくらいか
—残業はあるか
—通勤にどれくらい時間がかかるか
—忙しい時期はいつか
—人とのやり取りや緊張する場面が多いか

あなたの仕事について話していなければ、主治医は知ることができません。仕事の内容が伝わっていると、診断書の内容も実際の働き方に近づきやすくなります。

復職で大切なのは、「働きたい」という気持ちだけではありません。その仕事を、無理なく続けられる状態かどうかです。

不安なことや、まだ難しいと感じることがあれば、主治医や会社に早めに伝えておきましょう。

場面 3 / 共通の事実

戻る場所と、条件

元の職場に戻すのか、別の場所にするのか。
どちらにも、理由があります。

経営者・人事

原則は、元の職場です。

環境が変わること自体が負担になりますし、配置を変えることが不利益な扱いだと受け取られることもあります。ただし、元の職場が不調の原因だった場合は別です。同じ場所に戻せば、同じことが起こりえます。本人の状態、職務、配慮可能性等から個別判断します。

目安として・・・

—業務内容が原因なら ───> 配置転換(違う場所)
—人間関係・環境が原因なら > 配置転換(違う場所)
—本人の病気・体調が原因なら > 原職復帰(元の場所)

いきなり「全く違う場所」へ移すと、環境変化がストレスになるリスクもあります。「元の部署」でリハビリを行い、正式復職時に「配置転換」することが推奨されます。まずは慣れた部署でリハビリ勤務を行い、そこで、本人にとってよりよい方向を見極めてどちらがいいのかを判断しましょう。この、「いつ見直すか」は必ず計画に入れてください。

復職判定チェックシート ダウンロードはこちら →

働く方

元の職場に戻る場合と、別の場所になる場合があります。

配置が変わっても、それは処分ではありません。同じ場所に戻すと負担が大きいと判断されただけです。逆に、元の職場に戻ることが不安なら、そう言ってかまいません。言わなければ伝わりません。

決まった条件は、書面でもらってください。

—
業務内容が原因なら ───> 配置転換(違う場所)
—人間関係・環境が原因なら > 配置転換(違う場所)
—本人の病気・体調が原因なら > 原職復帰(元の場所)

リハビリ勤務の本来の目的は、仕事の成果を出すことではなく「生活リズムの定着・体力や集中力の回復確認・通勤負担のテストです。そこで、仕事内容は変えず、責任や負荷だけを大幅に減らして慣らし運転をし、フルタイム勤務ができる体力・気力が戻ったことが確認できたら、改めて会社と相談しましょう。

場面 4 / 共通の事実

認められなかったとき

復職が認められないことがあります。
その場合、休職は続きます。満了日は変わりません。

経営者・人事

リハビリ勤務後の、本格復職可否の判断基準は、「休職前の業務を行える状態まで戻っているか(見込めるか)」です。以下の懸念が残る場合、復職は難しいでしょう。

出勤の安定性(勤怠)が不十分

遅刻・早退・欠勤が頻発した、あるいは特定の曜日や時間帯に出勤できない。

「フルタイム出勤」に耐えられる体力が戻っていない。

仕事のパフォーマンス・集中力の著しい低下

簡単な判断ミスや物忘れが非常に多い。

疲労の蓄積が激しく、勤務時間の後半に座っていることすら困難。

心理的・感情的な不安定さ(メンタル症状の再発傾向)

業務上の指摘に対して過剰に過敏・攻撃的・情緒不安定になる。

周囲とのコミュニケーションがスムーズにとれない。

医師(主治医・産業医)の意見の不一致・不適格判定

主治医が「復職可能」と診断していても、実際の現場での挙動を見た産業医が「時期尚早(再発のリスクが極めて高い)」と判断した。

本人にとっては「復職できると思っていたのに拒否された」と感じやすく、ショックや挫折感から症状が悪化するリスクがあります。伝え方の原則は「能力の否定ではなく、体調・安全面を最優先した結果であること」を強調することです。休職期間がまだ残っている場合は、「あと〇ヶ月休養・治療に専念し、次回の判定を目指そう」と今後の見通しや再挑戦の道筋を示します。

主治医が「復職可」、産業医が「不可」とした場合、会社は原則として自社の職場環境を把握している産業医の意見を優先して判断できます。ただし、その根拠となる「勤務状態の観察記録」をしっかり残しておくことが不可欠です。

働く方

復職が認められないことがあります。

「人生やキャリアを否定された」と感じるかもしれませんが、このように捉えてください。

「不合格・失格」ではなく「身体のブレーキが正常に効いた」

リハビリ勤務で復職が見送られたのは、「あなたの能力が足りないから」ではありません。

「ここでフルタイムに戻ったら倒れてしまうかもしれない」という身体と心のサイン(限界)を、リハビリ勤務というテストによって安全に見つけられたということです。ここで無理に復職して再発・再休職になる方が、ダメージは何倍も大きくなります。

主治医の「OK」と会社の「OK」基準の違いがある

主治医の「復職可能」は、「日常の生活ができ、症状が落ち着いている」という医療上の判断であることが多いです。一方、会社の「復職可能」は、「週5日・8時間、責任を持って業務を行える」という労働上の判断です。

このギャップは誰にでも生じることがあります。会社が意図的に意地悪をしているわけではありません。

自分の「実際の勤務記録」を客観的に振り返る

感情的にならず、リハビリ期間中の自分の状態を冷静に振り返ってみます。

「午後は頭が働かず、座っているだけで精一杯だった」
「家に戻ると倒れ込むように寝てしまい、土日は何もできなかった」
「遅刻や早退が何度かあった」

これらに思い当たる節があれば、「まだ体力が追いついていない」ということです。

選択肢を1つに絞らない(柔軟なキャリアの再検討)

「何が何でも元の会社に戻らなければならない」と思い詰めると追い込まれます。

認められなかったことは、あなたの評価ではありません。その時点で条件が揃っていなかった、というだけです。

Next — Chapter 6

復職直後

復帰にむけた準備。復帰直後に起こること。

6 復職直後を読む →

Author

千葉若菜

千葉若菜 特定社会保険労務士

エンタメ専門社労士事務所 つくる Creative Workforce Support
音楽業界歴20年の社労士

プロフィール →