1. 求職者の行動線(カスタマージャーニー)
以下は代表的な行動を整理したモデルとして示します。全員が同じ順番を通るわけではなく、採用サイトとSNSを行き来したり、SNSから会社を知ったりする経路もあります。
| 段階 | 求職者の行動 | そのときの疑問 | 会社が用意する情報 |
|---|---|---|---|
| 知る | 求人、紹介、検索、SNSなどで会社に接する | 「どんな会社? 自分に関係がある?」 | 事業・募集職種・仕事の概要 |
| 興味を持つ | 会社名で検索し、採用サイトを読む | 「どんな仕事を任される? 条件は合う?」 | 仕事内容・募集条件・働く制度 |
| 確かめる | SNSや社員の記事、動画を見る | 「説明されている会社の姿は、日常にも表れている?」 | 人・現場・仕事の進め方・判断の実例 |
| 比較する | 他社と仕事内容や働き方を比べる | 「自分が大切にしたいことと合う?」 | 選ぶ理由となる具体的な違い |
| 応募する | 選考情報を確認して応募する | 「何を準備する? 応募後はどう進む?」 | 選考の流れ・必要書類・応募窓口 |
採用において、SNSが特に力を発揮しやすいのは「確かめる」段階です。スマートフォンからの閲覧を前提に、採用サイトへの導線を整えます。
2. 「バズ」を目指さない
たくさん見られた。その人たちは、働きたいと思ったでしょうか?
動画が面白くて見ることと、その会社で働きたいと思うことは、同じではありません。再生回数が増えても、それが仕事内容に直結していない場合、応募につながることは、あまりありません。
バズは会社を知るきっかけになり得ますが、その先で、仕事への関心や会社への理解が深まったか。採用サイトの閲覧や問い合わせ、応募時の声まで見て、発信の役割を確かめる必要があります。
| 確認したいこと |
|---|
- 投稿が届いたか
- 会社に関心を持ったか
- 理解が深まったか
- 応募や選考につながったか
SNSを見た後に会社名を検索する人もいるため、リンクのクリックだけで全てを把握できるわけではありません。応募時や面接で「何を見て、どう感じたか」を聞くことも、重要な指針となります。
3. 例えば「風通しのよい会社です」は、何で確かめてもらいますか。
採用サイトに書かれた言葉だけでは、働く場面まで想像できないことがあります。文字ではよくみかける、「研修制度が充実」「チームワークを重視」「柔軟な働き方」などなど。
SNSでは、その抽象的な言葉を具体的な場面として届けます。会社が伝えたい魅力と、現場で実際に起きていることがつながることで、会社を理解し、信頼してもらえるための材料になります。
| 採用サイトで伝える例 | SNSや記事で確かめられる場面 | |
|---|---|---|
| 若手の企画への参加 | 若手が出した案と、採用までの話し合い | |
| チームで品質を高める | 制作物を見ながら、改善点を相談する様子 | |
| 入社後の学びを支援 | 先輩のレビュー、研修で学んだことの実践 | |
| 制作へのこだわり | なぜその表現を選んだのかという担当者の説明 |
「風通しのいい会社です」という抽象的な言葉を、若手の提案が企画になるまでの経緯、現場の様子、トップの受け止め、企画の舞台裏をそれぞれ見せることで、具体的な会社の姿として、立体的に伝えます。
採用サイト仕事と制度の全体像
Instagramその仕事をしている人と現場
Xトップ自身の判断や考え
YouTube・note判断の背景と一連の過程
同じ情報を全媒体へ転載するのではなく、同じ会社を、異なる角度から理解できる関係として見せます。
SNSの求人投稿にも「募集広告のルール」があります
X、Instagram、TikTokなどで採用情報を発信する場合も、労働者を募集する内容であれば、職業安定法上の募集広告に該当します。
職業安定法第5条の4では、求人や労働者募集に関する情報について、虚偽または誤解を生じさせる表示を禁止するとともに、正確かつ最新の内容に保つことを求めています。
◆SNSの募集広告に必要な6つの情報
令和7年の改正で、SNSで直接募集する場合は、投稿本文や求人画像など、その募集広告自体に「募集主の名称・住所・連絡先・業務内容・就業場所・賃金」の6情報を表示します。6情報を掲載した自社サイトへのリンクだけでは足りません。
「詳しくはDMで」「高収入の簡単な仕事です」といった表示だけでは、募集主や労働条件を確認できません。投稿本文や、投稿から容易に確認できる募集要項などに、必要な情報を明確に表示しましょう。
詳細は、厚生労働省の「労働者の募集広告には6情報の表示が必要です」で確認できます。
なお、この6項目は、募集広告における最低限の表示事項です。実際に労働者を募集する際には、より詳細な労働条件を適切に明示する必要があります。
◆募集が終わった投稿は、そのままにしない
SNSでは、過去の投稿が検索やシェアによって長期間閲覧されることがあります。
募集が終了した場合は、投稿を削除するか、「募集終了」と分かるように修正してください。賃金、勤務地、仕事内容などが変更された場合も、速やかな更新が必要です。
募集情報について虚偽・誤解を生じさせる表示は禁止されています。古い投稿を残したままだと、正確さに欠ける情報になってしまいます。自社サイトだけでなく、SNS、求人媒体、採用資料の内容が一致しているかも確認しましょう。
◆求人広告は、そのまま労働契約になるとは限らない
一般に、求人広告や求人票は、求職者に応募を促すための「申込みの誘引」と考えられています。
そのため、求人広告に記載された内容が、直ちに労働契約の内容として確定するわけではありません。実際の労働条件は、採用までの説明や当事者間の合意を踏まえて決まり、労働条件通知書や雇用契約書などで確認します。
ただし、「求人広告は契約ではないから、後から自由に変更できる」という意味ではありません。
求職者は、求人広告に記載された賃金、勤務時間、勤務地などを見て応募を判断します。具体的な条件を表示して募集しておきながら、十分な説明なく不利益な条件へ変更すれば、トラブルや信用低下につながります。
◆条件を変更する場合は、契約前に明示する
募集時に明示した労働条件を変更する場合、職業安定法第5条の3に基づき、企業は変更内容を求職者へ明示しなければなりません。
「面接で別の条件を口頭で伝えた」というだけでは不十分です。
変更が決まった段階で速やかに説明し、遅くとも労働契約を締結する前までに明示します。そのうえで、採用時に交付する労働条件通知書や雇用契約書にも、最終的な条件を正確に記載します。
労働契約の締結時には、労働基準法第15条に基づく労働条件の明示も必要です。
◆虚偽の求人広告には罰則があります
単なる記載ミスではなく、虚偽の広告や虚偽の条件を用いて労働者を募集した場合には、職業安定法第65条により、6カ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が科される可能性があります。
求人広告が直ちに労働契約の内容になるとは限らないとしても、企業が自由な表現で募集できるわけではありません。
SNSは気軽に更新できる媒体ですが、求人投稿は企業の正式な募集情報です。
投稿時の表示だけでなく、条件変更、募集終了、採用時の労働条件通知までを一つの流れとして管理することが大切です。
掲載内容や労働条件通知書に不安のある方、リーガルチェックもお承ります。
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